陸風吹いて江水流るる
-余話、あるいは夜話-
玉の剣
「やっぱり竹の簡っていいよなぁ。木に比べて丈夫だし長持ちだし」
竹の巻本を弄びながら、頬杖をついて郭嘉がぼやく。その膝には、阿毳がのっしりと我が物顔で占領している。
横耳でそれを聞いた周瑜は、筆を止めて困ったように微笑した。
「北には竹は殆ど自生していないそうですからね」
「ああ、どうも暖かな地方でしか育たないらしいよ。おかげで雨の日とか大変だぞ~。まめに虫干ししなきゃならないし、湿気対策やら書虫対策やらで気を使うのなんの」
うっかり重要文献にカビ生やした官吏がいたなどと、笑い話まじりに言う。
「でも、重いですよ」
「まぁな」
冊書なんかにしてしまうと、竹はかなりの重量となる。その点木簡は軽いので一度に数冊の持ち運びも竹簡に比べて楽ではあった。
「頑丈だからこその重さだな」
手の内で軽く投げたりして郭嘉が言うのに、周瑜はなんともいえぬ顔をする。
半分武官でもある自分はともかく、張昭や張紘といった純然たる文官で、さらに年もそこそこ行っている官吏たちが、これでもかとばかりの冊書を抱えている姿は見るに忍びない。大量の冊書を持って回廊を行き来するうちに、腕に筋肉がつきそうだと思う。
「こうしてみると江東は温暖だから年中過ごしやすいし、作物はたくさん取れるし、何より食いモンが美味い
――――水に慣れるまでが大変だけど」
江東に来たばかりの時の苦い記憶を思い出して、郭嘉は微妙な表情を浮かべる。周瑜も答えに惑い、ただ苦笑していた。
慣れぬ者は辛いという噂は本当で、郭嘉も当初は水にかなり悩まされた。幸い風土病までには至らなかったが、ひどく腹を下して、それなりに大変だったのだ。笑い事のようだが、本人は本気で辛い。
それを差し引けば、南方は実に良い環境である。気候は農耕に適しており、北と違って多種多様な作物が豊富に育つ。その分、食文化も豊かだった。料理の種類も多いし、美食を追求する余裕があるのだろう、味も良かった。
対して華北は内陸部であることもあり、乾燥していて気温も寒いため、農耕にあまり向いていない。採れる作物も味気ないものばかりだった。
「……のわりに、昔から国の中心として栄えるのが華北なのは何故でしょうね」
何気ない口ぶりだが、少々釈然としない響きが篭るのは否めない。
「南には南の、北には北の良い所がある」
ポツリと郭嘉がそう零したのに、周瑜はふとその横顔へ視線を向けた。どこか
深蔵のある声音だったからだ。
「住んでみますか?」
周瑜が微笑を浮かべ尋ねた。
郭嘉はそれへ、ただ静かに、淡く笑い返しただけだった。
「一度訊いてみたいと思ったことがあるんです」
「何?」
唐突のような周瑜の問いかけに、問いかけられた方はどこか茫洋とした風情で外を眺めていた。
「何故曹孟徳だったのかな、と」
「何だ、もしかして理由まだ聞き足りない?」
「いえ、あなたの惚気はもう十分です」
思わず周瑜は両耳に手を当てて、これ以上は不要との意思表示をした。郭嘉に曹操の話をさせると、あまりのベタ惚れっぷりに聞いているこちらが尻の座りが悪くなってくる。
きっぱり拒否をされ、郭嘉は心なしがっかりした様子だった。「公瑾殿がいけずを言う」などとふざけた口調で、慰めを求めるように阿毳を抱き上げその柔らかい毛に顔を埋める。
やや溜息気味に周瑜は瞼を伏せた。
「言い方を変えます。
――――貴方は漢を建て直したいと思っているのですか」
予想だにしていなかった言葉だったのだろう。顔を上げた郭嘉はキョトンと瞬いて、しばらく問いかけの内容を解読しているようだった。
ゆっくりと吟味するように瞳を動かし、いい加減暴れ出した猫を手放してから、ようよう口を開いた。
「もしかして公瑾殿は、うちの主公があわよくば帝位に登ろうと目論んでいる
――――とか考えてる?」
質問に質問で返す。無言の返答は肯定の意だ。
恐れ多くも皇位継承権を持つ者以外が帝位に就こうと考えるのは、謀反の罪で死罪に問われかねない。ましてや劉姓以外の人間が皇帝になろうという発想自体、常の世であれば誰も思いもしないことだ。
他姓の皇帝が意味するのはすなわち、王朝交代。
東西合わせて400年も続いてきた王朝は、人民の心の深層に強く根ざしている。それを否定する意見が、こうもすんなりと、しかも何の躊躇いも無く、可能性論として出てくるということは、今の漢という王室がそれだけ既に権威を失っている証でもあった。
郭嘉は思わず噴き出した。急な動作に驚いたのか、毛繕いしていた阿毳が飛び上がる。
思わぬ郭嘉の反応が理解できず、周瑜は困惑した。それでも視線は真っ直ぐ注いだまま外さない。
「ああそうか、そうだよな。はたから見たらそう見えなくもないもんな」
妙に感心したそぶりで顎を撫で、頷く。
それから不意に神妙な声音で答えた。
「安心しろよ。殿は玉座にはつかない」
「……随分、はっきり言い切りますね」
「まあ直接訊いたわけじゃないけどな
――――あんなロクに身動きもできない、クソ不自由でクソ面倒な地位には就かないだろう」
「『クソ』って」
随分な言いっぷりに、周瑜は呆れて開いた口が塞がらない。
天下の玉座に対してクソなどとのたまうとは、これぞ不敬に他ならない。
「特にこの時世じゃあな……いくら腐敗しているといえども、漢の名前はまだ民衆にとって影響力が強すぎる。何せ400年も統治してきたんだ、反発も強いだろうし、たとえ危険を冒してまでなったところで、やりにくくてしょうがないだろ」
いまいち納得できない表情の周瑜に郭嘉は淡く笑い、「そうだなぁ」と軽く視線をさ迷わせ、ふと
床に飾られた剣に目を留めた。
「たとえるなら、漢朝の皇帝は
黄金の剣だな」
「黄金、ですか」
郭嘉の目線を辿って、周瑜もそちらを見た。
床の衝立に掛けられた、鞘の装飾も美しい数本の剣。殆どが儀礼や剣舞用の飾り太刀で、実戦には不向きの鈍らである。
「金は美しく、高価で稀少で、多くの人間の憧れを集める。でも、曹孟徳という人間は、自分が鉄の剣であることをよく分かっている」
綺麗な、光り輝く存在。血に穢れる無骨な鉄の剣には、そんな存在には到底成り代われない。
「でもさ、いくら綺麗でも、黄金っていうのはその実重いし脆いしで、実戦では何の役にも立たないだろ。結局は飾って愛でられるだけのもの。それに比べて鉄の剣は、ずっと軽いし丈夫だし、実用性に優れている」
郭嘉は、再び丸くなった猫の背を撫でながら滔々と続けた。
「鉄は所詮鉄。金にはなれはしない。でも殿はそれでかまわないと思っている。振るい手が選ぶのは鉄の剣だ。戦をする兵が手にするのは斬れる剣だ。主上は頼りないけど、椅子に座っているだけでも十分で、能力がある者がその下で動けばいい」
それを世間では「傀儡」と言うんだけどな、と郭嘉は嘯き、周瑜も苦笑した。
曹操は飾りになりたいわけではない。むしろお飾りは汚れのない、相応しい者に任せればいい。そもそも彼が本当に成し遂げたい事は、
そこでは成し得ないのだ。皇帝とはそれだけ縛りの多い地位であり、実権を掌握して政を行うには、宰相という立場が実は一番丁度いい。
まあ、将来的には曹姓の……とも考えているかもしれないが、ただ少なくとも曹操自身が玉座を目指すことはない。そう郭嘉は見ていた。
「そしていつか『
玉の剣』が現れた時に王室を明け渡せばいい
――――そう思ってるんじゃないかな」
「玉……?」
「鉄よりも軽くて硬くて、金よりもずっと愛される貴い宝さ」
なるほど、と周瑜は心中で頷いた。郭嘉の比喩するところが分かった。
古くは周の文王がそうであったように。
あるいは秦の始皇帝から高祖が、新の王莽から光武帝が漢を興したように。
玉の剣。
この大いに乱れ狂った世にも、いつかそんな器の人物が現れるだろうか。
その実、高祖や光武帝と言われても、周瑜にはいまいち身近に迫ってこない。腐敗した官吏ばかり見てきたせいだろうか。
乱世は英雄を生むという。確かにその言葉どおりこの世で英雄を冠する者は多いが、その中で郭嘉の言うような「玉」の器を持つ人間など、果たしているのだろうか。或いはそんな伝説的な人物を待っていたずらに乱を長引かせるよりも、今ここに在る者たちの誰かがなった方が、ずっと手っ取り早いような気もする。
「でも、奉孝自身はどう考えているんですか」
「俺?」
郭嘉が素頓狂な声を上げた。
「たとえ貴方のご主君にその意思がなくても、貴方は考えたりはしないのかと」
どこか読めぬ微笑を湛える周瑜に、郭嘉はポリポリと頬を掻いて、視線を宙に巡らせた。そうきたか、と。
郭嘉自身、あとで思い返しても、どうしてこの時そのことを言おうと思ったかは分からない。
しかし逡巡は数拍だった。躊躇はむしろ一瞬であった。
「
――――俺の考え違いじゃないと思うけど、公瑾殿、漢王朝なんてなくなればいい、とか思ってない?」
またもや問いに問いで返す。しかし周瑜はそのことに構うより、内容の方に少々どきりとした。
しかしこの時代、漢を復興させることに正義を掲げ、使命感を燃やす人間は多くおれども、見限る人間はごく少数
―――むしろ異端と言ってもいい。
そんなことを口にしようものなら、非難を受けるか蔑視されるか。どれだけ先見に富んだ意見であっても、こればかりは受け入れられぬ傾向にある。
しかし先ほどの質問といい、これまでの口ぶりといい、どこか漢という国に淡白な周瑜の態度に、郭嘉は前々から引っ掛かりを覚えていた。あらぬ方を向き、思い悩む調子で続ける。
「いや、少し違うな。漢に見切りもつけてるけど、それ以上に国は何も一つでなくてもいいとか考えてないか? 四つ……いや、三つか?」
「二つです」
はっきりとした返答に、郭嘉は相貌を隣に戻す。それからニヤリと笑った。
周瑜も腹を決める。まさかこう切り返しがくるとは思わなかったが、郭嘉にならバレても構わないという思いもあった。
「さすがにご炯眼ですね。正直、天下二分のことまで見抜かれるとは思ってませんでした」
「二つとなると……華北と江南東か」
スッと、冴え渡るような双眸で射抜かれる。いつもの温和な雰囲気が一瞬掻き消えて、のぞく冷たく鋭い光。
冷水を浴びせかけられたかの如く、郭嘉は背筋がゾワッと来た。
(うっわ、鳥肌立った。藪蛇だったか)
なまじ美貌だから余計凄みがある。冷艶ってこういうことを言うのか、などと下らないことを思いながら、郭嘉はそこはかとなく両腕を摩った。
「腹を割ってくれてありがとうよ。これでお互い隠し事なしだ」
にこりと笑い、冷えた空気を溶解する。
「本当は俺は仕えた時からずっと、殿に天下を獲って欲しいと思ってる。殿が頂点に立つ姿を見たい。そのために俺はすべてを懸ける。今も、その気持ちに変わらない。それは公瑾殿も同じだろう?」
相手は違えども。
「そう、ですね」
力に満ちた幼馴染の笑顔を思い浮かべながら、周瑜は頷く。そのために、自分は今こうして在る。その気持ちに相違はなかった。
「でもさ
――――実は、ちょっとだけ。ほんの少しだけ、思っていることもある」
曖昧に、ともすれば弱ったように、郭嘉の笑みから力が抜ける。
「これはまだ誰にも言ったことはない。だから内密で頼む」
「……」
前置きの意図を読めぬまま、とりあえず周瑜は黙って続きを待った。卓の上には書きかけの簡が放られ、墨はすっかり乾いている。けれど眼前の男から意識を外せなかった。
「本音のところ、たった一つの権力がこの広大な大陸を統治するなど無理があるとは俺も思う。華北でさえ土地を十里離れただけで言葉が通じず、この長江の南に至れば最早生活も文化も全く違うのが現状だ。中央政権が隅々までくまなく支配力を行き渡らせ、長きに亘り体制を維持するなど、現実には不可能だろう。無論、秩序を保つためには『纏め役』ってのは必要だが、いくつかに分散させないと、たとえ上手く民を掌握できたとしても、いずれどこかで無理が来て破綻する」
「それでは……」
「いや、だからといって国を分けるのが良いとも思わない。複数の国が立てば、いずれまた互いに頂点を目指して争いが始まるだろう。人間ってのはさ……すぐに飢えるから」
どこか空虚に呟く郭嘉に、周瑜は視線を逸らした。人間もまた、愚かで浅はかで獰猛な獣だ。求めても求めても足りない、手に入れれば更に欲しくなる、欲深い生き物。
「では、貴方はどうするのがいいと?」
「三公がある」
その言に、周瑜は意味を汲み取れず呆けた。
「今この漢には、俺が見る限りで三人の英雄がいる。一人は曹孟徳、もう一人は孫伯符、そして……劉玄徳」
最後の名を言う時だけ、声音に僅かな揺らぎがあった。どこか苦々しい響き。
「劉玄徳……」
その名は周瑜も知っていた。連戦敗軍の将。いつも戦に負けては逃げ、誰かの庇護を受けて媚び諂いながら、どこか強かで侮れない男。一見取るに足らぬ存在に見えて、周瑜にとっては不快な引っ掛かりを与える要警戒の人物であった。
その男を、郭嘉は英雄と称する。その意は量れないけれど、彼は一度許都で劉備と会っているという。その時に、きっと自分が感じている印象よりも、もっとはっきりとしたものを、あの男の中に見たのかもしれない。ただ先程の声の揺らぎからすると、客観的評価はともかく、郭嘉自身は劉備のことを心底では快く思っていないのではないかと周瑜は思った。
「人々の心をまとめるには、国という象徴は一つがいい。だが上に立つのは何も一人でなければいけないということはない。現に今、三人はそれぞれに支配地を持ち、それぞれ民の支持を得ている。その三人が争い合わずとも、手を取って共に政を支え合う道だってあるはずなんだ。今の三公の在り方を変え、実権を制限した皇位の下で、智勇人望を兼ね添えた三人が分割統治すれば、あるいは多くの血を流さずして国を安んずることもできるのでは……ってな」
華北を治める曹姓が智を以って司徒に、江東の支配する孫姓が勇を以って太尉に、そしてほぼ全土の民衆の心を得る劉姓が人徳を以って司空に。確かにそうなれば、傾きかけた漢でもうまく立ち直り、再び泰平の世が訪れるかもしれない。
それはあまりにも現実感のない、にわかには想像しがたい夢物語だったが、周瑜はなかなか面白い視点だと新鮮な気持ちになった。
「ちなみに、次代へはどう繋ぐと?」
「個人的には高官の中から全官吏の人気によって選ばれるというのが一番安定しそうだと思う。ただそれには官吏制度自体の見直しが必要になるだろう。今の推挙制の登用ではどうしても家柄だの癒着だのでクズ官吏が入り込むし、そうすると実力ではなく賄賂なんかで選ばれかねない」
「官吏人気……」
未だかつてない発想で唖然とする周瑜に、郭嘉は淡く苦笑した。
「我ながら突拍子もないと思ってるよ。まずありえないともな。そもそも、あの三人が帝を立てて仲良く政治を行う姿なんて想像できやしない。この策の欠点は、三人が争わないって前提に立っていることだ」
だから所詮絵空事なんだが、と天を仰いで肩を竦めてみせる。
「……喧嘩しそうですね」
「政に落とし合い、謀略はつきものだからな」
「ならいっそ、劉備を帝位につけてみるのは?」
「それは無理だな。いくら劉姓で人望があると言っても、そしてそれが乱世を早く収める方法だといわれても、劉備が玉座につけば殿は意地でも頭を下げないだろうから」
何やら確執があるようだ。周瑜はそれには触れず、ただ「はぁ」と返した。
郭嘉は頬に刻む苦笑の影を深めた。おもむろに仰向けになって大の字になる。
阿毳が膝の上からモソモソと移動し、その頬に擦り寄ってくるのを撫でてやりながら、天井を眺め、目を眇めた。遠くに思いを馳せるように。
「でもな……時折脳裏に思い浮かぶんだ。主上が玉座におわし、その下で三人が互いに論を交わしていて、そして更にその下で俺達が笑いながら仕事をしている。平和で楽しい……夢だ」
一人ごちるように、言葉を紡ぐ。
周瑜は微笑んだ。先ほどとは違う、正真正銘心からの柔らかな笑顔で。
「私は好いと思いますよ、その夢。殺し合うことを考えるより、ずっといい。もし叶うなら、私も見てみたい」
お互いに目を合わせ、フッと笑う。無理だと承知の上だからこそ、夢見たい願いだ。
何故争いあわなければならないのかと、互いに主君に天下を獲らせたいと思いながらも、矛盾した思いが確かにある。たとえ敵同士でも、出会って話り合って酒を飲み交わして、相手を知ることもある。決して悪い人間ではないと知るようになる。憎みあうよりも親しくなりたいと思う。それで十分なのではないか。戦う必要など、本当はどこにもないのではないのではないか
――――
周瑜が物思いに深けている隣で、郭嘉は寝転んだまま軽い口調で嘯いた。
「まあその反面、百姓の皇帝がいるんだったら、宦官の孫の皇帝ってのもありかもなとは思うけど」
途端、郭嘉は自身がたった今紡いだ言葉に引っ掛かった。一瞬、記憶の中の誰かの声と重なる。
以前、これによく似た科白を聞かなかっただろうか。あれを言ったのは……
『百姓が皇帝になれるのだったら
――――』
そうだ。かつて酒の席で、荀彧は確かにそう呟いた。どこか遠くを見つめ、ぽつりと。
その時は郭嘉は、独り言だと思って聞き流していた。彼が言い指して黙りこんだのもあるし、珍しく酔っていたようだから、夢見半分のうわ言だろうと。
けれど今になって思う。あれは一体どういう意味だったのだろう。
(あいつ……まさか、な)
モヤモヤとした予感のようなものを感じて郭嘉が顎に手を当てていると、気づいた周瑜が訝し気に首をかしげた。
「奉孝?」
「あ? ん、いや……何でもない」
パッと手を放し、郭嘉は努めて普段どおりに振舞った。
けれどにわかに心中に生じた焦燥は消えず、誤魔化すように手元の柔らかい感触を撫でた。にゃーと甘えるような声が、しかし今は遠くに聞こえる。
玉の剣。
遠い北の地にいる自分の友は、それを自ら作ろうとしているのではないだろうか。
昔から一度思いつめると止まれない癖がある。
大切な古馴染みに対する微かな憂慮が、初めて郭嘉の中で芽生えた。
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金と鉄と玉の硬さと重さをめっちゃ調べた。
金:モース硬度 3 <鉄:モース硬度 4.5 <玉(ここでは硬玉の本翡翠):モース硬度 6.5~7
(ちなみにダイヤモンドが一番硬くて10)
ちなみに硬度5.5の鉄ナイフで翡翠に傷をつけようと思ってもつかないそうです。
で比重はといいますと、1cm×1cm×1cm=1cm~3あたり、
純金:19.32g>鉄:7.86g>玉:3.25~3.35g
ということで、玉が一番軽い。
もちろんこれも混合物や化合物によって変わってきます。
さらに、ただ単に重量と言ってますが、実際には地球上における密度の計算によってうんぬんかんぬん。
あと、たとえば鉄を、鉄よりもモース硬度が強いはずのガラスにぶつけても、ガラスは割れてしまいます。
これは鉄の方がガラスよりも重いため、こういった場合にはむしろ硬度は関係ないだのどうの。
それとか、一番モース硬度が強い金剛石(ダイヤモンド)は、実は石の構造上ある一点への衝撃に弱くて砕けやすく、翡翠はモース硬度は高くないものの、構造上じん性(粘り強さのようなもの)に優れ、ダイヤモンドよりも丈夫な数少ない石という、なかなか名誉な称号を得ています。
あと三公分立は私の素人発想ですあしからず……ザ・ユナイテッドスリーキングダム。